ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

今週の土曜日にはいよいよJリーグが開幕しますね。コンサドーレ札幌は久しぶりにJ1の舞台で戦うことになります。コンサドーレはJ1とJ2を行ったり来たりする典型的なエレベーターチームでJ1残留が現実的な目標となりますが、そのためにはスタートが重要です。勝てるに越したことはありませんが、まずは負けないことですね。引き分けで勝ち点1を積み重ねることがシーズン終盤に効いてきますし、得失点差で明暗が分かれることもありますので、負けた時でも大敗しないことが大事です。自ずと守備を重視する戦い方になるかと思いますが、なんとか厳しい残留争いを勝ち抜いてもらいたいです。頑張ってください!応援しています!!

前置きが少し長くなりましたね。それでは本題に入って参りましょう。今週からは確定申告特集と題して連載をスタートします。今回取り上げるのは昨年(平成28年)4月に創設された「空き家特例」についてです。これはどのような制度なのでしょうか。早速中味を見ていきたいと思います。

「空き家特例」とは、相続等で取得した一定の要件を満たす空き家とその敷地等(敷地・借地権)を一定期間内に譲渡して譲渡益が出た場合、最大で3,000万円の特別控除を受けられる制度です(租税特別措置法第35条第3項)。これは居住用財産の譲渡所得に係る最大3,000万円の特別控除制度(租税特別措置法第35条第2項)に倣ったものです。ではなぜこのような制度ができたのでしょうか。

それは近年増加している空き家の問題と深い関係があります。4年ほど前のデータになりますが、総務省の「住宅・土地統計調査」によると平成25年の空き家戸数は約820万戸で、空き家率は13.5%にもなります。約7戸に1戸は空き家になる計算です。こうして見るともの凄い数ですよね。そして空き家の戸数は年々増え続けていますが、その最大の要因は相続になります。つまり独居老人であった被相続人が亡くなり、そのまま空き家になるケースが一番多いということです。

そこで平成27年5月からは「空き家対策特別措置法」が施行され、倒壊の危険等がある空き家を各自治体が「特定空き家」に指定することができ、敷地に係る固定資産税の減税措置(最大6分の1に減額)をやめるとともに、所有者に対して解体等の改善命令等を出すことができるようになりました。そして命令等に従わないときは各自治体が代わりに解体措置をとることができるようにもなりました。

このように空き家に対する規制が強化されてきていますが、規制するだけでは空き家は減らないといった厳しい現実もあります。そこで空き家の有効利用を図るために税制面で後押ししようということになり、この「空き家特例」税制が創設されたというわけです。「空き家対策特別措置法」が鞭だとすれば、「空き家特例」税制は飴に当たるものになり、この飴と鞭の両輪で空き家対策を推進していこうということになります。

それにしても居住用財産と同じ3,000万円の控除を認めるとは思い切った制度をつくったものだと思います。たださすがにこれだけ優遇する以上は適用要件も非常に厳しいものになっていて、しかもかなり複雑です。一つ一つ順番に見ていきましょう。

まず対象者ですが、相続又は遺贈により被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を取得した者(相続人・受遺者)になります。ここで重要なのは「及び」となっている部分です。つまり、空き家とその敷地等の両方を相続等により取得していなければなりません。したがって、空き家またはその敷地等のどちらか一方しか相続等により取得していない場合は「空き家特例」の適用は受けられないことになります。ここは要注意です。

次に対象財産は被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等ですが、被相続人居住用家屋は空き家であることが条件ですから、被相続人が生前独りで住んでいた家屋ということになります。相続開始直前において親族等の同居人がいた場合はもちろん、家屋の一部を区切って賃貸していた場合(賃借人がいた場合)でも「空き家特例」の適用は受けられませんので注意してください。

また、相続開始直前において被相続人が老人ホーム等に入居していて、生前から既に空き家となっていた場合も「空き家特例」の適用を受けることはできません。これは相続税の小規模宅地等の特例では、平成26年から原則として老人ホーム等に入居していた場合でも適用を認めることになっているのとは対照的です。これはもし生前から空き家になっていたのであれば、生前に被相続人が通常の居住用財産の3,000万円控除(前述の租税特別措置法第35条第2項)を受けることができるからだと考えられます。

被相続人居住用家屋についてはあと2つ要件がありますが、長くなりましたので続きは次回にいたします。来週もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。