ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

昨日に続いて短めの記事をもう1本アップしますね。今回は「特別の寄与」制度の創設についてです。「特別の寄与」について解説する前に、まずは従来から認められている「寄与分」についてご説明いたしましょう。「寄与分」とは、共同相続人の中に被相続人の療養看護(介護)等に貢献した者がいる場合において、一定の要件を満たすときは、その相続人について法定相続分等よりも多くの取り分を認めるという制度です。

ただこれはあくまでも相続人に認められている制度で、例えば相続人の配偶者(長男の妻など)が被相続人の療養看護(介護)等に貢献したとしても、従来は財産分与を請求することはできませんでした。
その相続人(長男)が生きていればそこを手厚く遺産分割する方法もありますが、もしその相続人(長男)が既に亡くなっていて子ども(被相続人の孫・代襲相続人)もいなければ相続人の配偶者(長男の妻)には何の報いもありません。

それではあんまりだというわけで今回「特別の寄与」制度が創設されたというわけです。具体的には、相続人以外の被相続人の親族(血族・姻族)が無償で被相続人の療養看護(介護)等に貢献した場合において、一定の要件を満たすときは、その親族は特別寄与者として相続人に対して特別寄与料(金銭)の請求ができることとなりました。
例えば長男の妻は相続人ではありませんが、被相続人の親族(姻族)に当たりますので、この「特別の寄与」制度の対象になります。

それでは「特別の寄与」が認められた場合の相続税の申告はどのようになるのでしょうか。まず特別寄与者についてですが、
特別寄与者は相続人ではないので遺贈がない場合は当初は申告していないことが通常です。その後特別寄与料の金額が確定した時点で、そこから原則として10か月以内に相続税の申告をしなければなりません。この特別寄与料の取得原因は「みなし遺贈」になります。また、特別寄与者は被相続人の一親等の血族でもなければもちろん配偶者でもありませんので、相続税額が2割増となる点にも注意が必要です。

一方特別寄与料を支払った相続人についてですが、特別寄与料の金額が確定した日から4か月以内に更正の請求をすることによって相続税の還付を受けることができます。特別寄与料は債務となりますので、相続税の申告では債務控除として処理します。相続人が複数いる場合は、特別寄与料は法定相続分等で割り振ることになります。なお「特別の寄与」制度は、令和元年7月1日以後の相続に適用されます。

「特別の寄与」制度の創設については以上になります。次回も引き続き改正民法(相続法)と、それに関連する税制改正になりますので、またぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
良いお盆休みをお過ごしください。