ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

早いものでもう師走ですが、今年も色々なことがありました。将棋では藤井聡太棋士があっという間に4冠と、8つのタイトルの半分を占めることとなり、19歳にして藤井時代の到来となりました。これまでは序盤にやや難があったようですが、AIを駆使した研究によりその弱点も克服してしまったようです。羽生善治九段の数々の記録は当面更新されることがないと思われていましたが、このペースだと思ったよりも早く記録を塗り替えていくことになるかもしれません。

野球では大谷翔平選手がメジャーリーグで超人的な活躍をしてMVPまで取ってしまいました。数年前までは北海道にいたわけですが、今や世界の大谷ですね。ファイターズ時代に一度生で見たことがありますが、当時からストレートはほとんど時速160㎞以上でした。日本シリーズも久しぶりに盛り上がりましたし、新型コロナで暗くなりがちな世相を明るくしてくれて、本当に良かったです。来年はコロナも収束してより良い年になってもらいたいものです。

それでは本題に入って参りましょう。今回も令和3年度税制改正についてです。今回は教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の見直しについてです。教育資金は前回も取り上げましたが、今回は結婚・子育て資金も同様の見直しが行われましたので、併せて解説していきたいと思います。

結婚・子育て資金も教育資金に似た制度で、直系尊属(父母や祖父母等)から信託銀行等との一定の契約に基づき贈与された結婚・子育て資金については、最大1,000万円まで贈与税が非課税になるというものです。この制度は教育資金の2年後の平成27年4月1日に始まったのですが、教育資金に比べると利用は少なく今年の3月末で利用累計額は約200億円と、教育資金の1%強にすぎません。その理由は色々あると思いますが、税務上は教育資金と違って当初から使い残した残額が相続税の課税対象となっており、相続税対策としての旨みがあまりないということもあるようです。

ただお孫さんへの贈与に係る残額については、通常の遺贈等だと2割加算となる相続税が、教育資金、結婚・子育て資金の残額については2割加算がなく、その点ではメリットがありました。しかし今回の改正で令和3年4月1日以後の贈与からは教育資金、結婚・子育て資金の残額についても2割加算の対象となりました。

前回も使った具体例でご説明していきたいと思います。前回の記事も下記のリンクから併せてご覧ください。祖父から孫に平成25年4月1日に700万円、平成31年4月1日に500万円、令和3年4月1日に300万円、合計1,500万円の教育資金を贈与したとします。そして平成25年12月末から毎年100万円ずつ教育資金に充てていったとします。祖父が信託契約期間中の令和4年2月1日に亡くなり、相続が開始した場合に教育資金の残額のうち相続税の2割加算の課税対象額がいくらになるかを計算します。相続開始日において孫は23歳以上で学校等に在学しておらず、教育訓練も受けていないとしますと、前回解説した下記の計算式の通り320万円がまずは相続税の課税対象額となります。

$${(700万円+500万円+300万円)-100万円×9年間}×\frac{500万円+300万円}{700万円+500万円+300万円}=320万円$$

令和3年度税制改正その1(教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の見直し)

そして2割加算の対象になるのは令和3年4月1日以後の贈与に係る残額ですから、平成31年4月1日の500万円に係る残額については2割加算の対象とはならず、令和3年4月1日の300万円に係る残額については、2割加算の対象となります。したがって、2割加算の対象額は下記の計算式の通り120万円になります。残りの200万円は2割加算の対象から外れます。

$$320万円×\frac{300万円}{500万円+300万円}=120万円$$

このように、贈与時期等によって相続税の課税対象額が変わるだけではなく、2割加算の対象になるかならないかも異なってきますので、使い残しの残額が生じる場合の相続税の計算には十分に留意してください。

令和3年度税制改正については以上になります。今年はあまりブログの更新ができませんでしたが、来年は最低でも月に1回のペースで更新することを目標にしたいと思います。来年もぜひご覧ください。それではこれからもよろしくお願いいたします。