ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
現在将棋の王将戦が行われていますが、藤井聡太五冠と羽生善治永世七冠との黄金カードがついに実現したということで、とても注目されていますね。先日第二局が行われ羽生永世七冠が1勝1敗のタイに持ち込みました。しかし藤井五冠が最後猛攻撃を仕掛け、一つ対応を間違えば逆転という局面を作ったのはさすがでしたし、それを間違えることなく受けきった羽生永世七冠もお見事でした。第一局は藤井五冠の快勝でしたが、羽生永世七冠の出来も決して悪くなく、好調を維持しているように見えます。名勝負になりそうな雰囲気があり、第三局以降もとても楽しみです。
それでは本題に入って参りましょう。今回は令和5年度税制改正大綱のうち相続時精算課税制度の見直しについてです。相続時精算課税制度とは、一定の要件を満たす直系尊属である贈与者が一定の要件を満たす推定相続人または孫である受贈者に対して生前贈与をした場合において、当該受贈者が贈与税の期限内申告時に当該贈与者に係る相続時精算課税選択届出書を提出したときは、その提出以後は当該贈与者からの生前贈与については暦年課税に代えて生涯累計2,500万円までの特別控除が適用され、贈与者の相続時にその生前贈与を相続等によるものとみなして相続財産に加算して相続税額を計算するというものです。なお、贈与税額は相続税額から控除されます。
相続時精算課税制度は、前回ご説明した生前贈与加算と比較して、加算期間が限定されているかいないか、強制適用か選択適用かといった違いはありますが、構造的にはとても似ています(下記のリンク先も併せてご覧ください)。つまり相続時精算課税制度を選択しても必ずしも相続税の節税になるわけではなく、あくまでも生前に多額の贈与をしておきたいというニーズに対応した制度です。例えば賃貸アパートを贈与したいと考えた場合、暦年贈与では多額の贈与税が課税されるため、それを回避するために相続時精算課税制度が利用されます。2,500万円までは贈与税は課税されず、2,500万円を超えた部分にのみ一律20%の贈与税が課税されることになりますので、暦年課税よりも贈与税額が少なくなります。そして最終的には相続時に精算されます。つまり相続税を前払いしたのと同じことになるわけです。
令和5年度税制改正その1(生前贈与加算の見直し)
このように相続時精算課税制度にも一定のニーズはあるものの、①必ずしも相続税の節税にはならないこと、②一度相続時精算課税制度を選択すると、当該贈与者からの贈与については暦年課税に戻れないこと、③どんなに少額の贈与でも生涯累計に加算され、かつ贈与税の申告が必要であること、などがネックとなって利用は低迷してきました。そこで今回の改正では、相続時精算課税制度を選択した場合でも暦年課税と同額の年間110万円までの基礎控除を受けられることになりました。暦年課税に戻れないのは従来通りですが、年間110万円までの贈与であれば贈与税も相続税も課税されませんので節税効果を享受することができ、贈与税の申告も不要になります。
今回の改正は令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税について適用されます。令和6年1月1日の贈与から相続時精算課税制度を選択した方が年間110万円まで生前贈与加算を免れる分相続税額の計算上有利になりますので、改正後は相続時精算課税制度を選択する受贈者が増えるものと見込まれます。
相続時精算課税制度については以上になります。
次回も令和5年度税制改正について解説しますので、またぜひご覧ください。