ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。
凄かった雪もようやく溶け、ついに春がやってきました。毎年春の到来は嬉しいものですが、今年ほど春が待ち遠しかったことはありません。球春ということでプロ野球も開幕しましたが、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が早速やりましたね。28年ぶりの完全試合(20歳5か月での達成は史上最年少)、そしてプロ野球新記録となる13者連続奪三振を含む27年ぶりの1試合19奪三振と、記録ずくめの偉業達成となりました。最近はMLBの大谷翔平選手やNBAの八村塁選手、将棋棋士の藤井聡太五冠など、規格外の若者が次々と現れていますね。これからどんな活躍を見せてくれるのかとても楽しみです。
それでは本題に入って参りましょう。この4月に民法第4条が改正となり、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたのは皆さんも報道等でご承知のことと思いますが、それに伴い相続税や贈与税に関する税制にも改正があります。今回はそれについて詳しく見ていきたいと思います。
まず相続税に関しては、令和4年4月1日以後の相続・遺贈から未成年者控除の適用が受けられる法定相続人の年齢要件が20歳未満から18歳未満に引き下げられました。また未成年者控除額も成年になるまでの年数に10万円を乗じて計算しますから、単純計算で20万円の減額(=相続税額の増額)ということになります。したがって、これについては納税者にとって不利な改正ということになりますね。
次に贈与税に関しては三つの改正があります。一つめに、令和4年4月1日以後の贈与から相続時精算課税(住宅取得等資金の特例に係るものを含む。以下同じ。)の適用を受けられる受贈者(直系卑属である推定相続人及び孫。以下相続時精算課税において同じ。)の年齢要件が贈与を受けた年の1月1日現在で18歳以上に引き下げられました。したがって令和4年の相続時精算課税に関しては、3月31日までの贈与であれば1月1日現在で20歳以上の受贈者、4月1日以後の贈与であれば1月1日現在で18歳以上の受贈者が適用を受けられるということになります。これは適用対象者が広がるという意味では納税者にとって有利な改正ですね。
ただ注意すべきなのは、例えば1月1日現在で18歳または19歳である受贈者が3月31日に200万円、4月1日に300万円の贈与を受けた場合は、4月1日の300万円は相続時精算課税の適用が可能ですが、3月31日の200万円は相続時精算課税の適用が受けられませんので、暦年課税で贈与税の申告をしなければなりません。年の途中で制度が変わっていますので、該当する方は来年の贈与税申告の際には十分に注意してください。
二つめに、相続時精算課税だけではなく暦年贈与課税についても同様の改正があります。直系尊属(父母・祖父母等)から暦年贈与を受けた場合において、一般税率より低い特例税率の適用を受けられる受贈者(子・孫等の直系卑属。以下暦年贈与課税において同じ。)の年齢要件が令和4年4月1日以後の贈与から贈与を受けた年の1月1日現在で18歳以上に引き下げられました。したがって令和4年の暦年贈与に関しては、3月31日までの贈与であれば1月1日現在で20歳以上の受贈者、4月1日以後の贈与であれば1月1日現在で18歳以上の受贈者が特例税率の適用を受けられるということになります。これも納税者にとって有利な改正ですね。
注意すべき点も相続時精算課税と同様です。例えば1月1日現在で18歳または19歳である受贈者が3月31日に200万円、4月1日に300万円の贈与を受けた場合は、4月1日の300万円は特例税率になりますが3月31日の200万円は一般税率になりますので、該当する方は来年の贈与税申告の際には十分に注意してください。この場合の贈与税の計算はやや複雑になりますので、下記のリンクも併せてご覧下さい。
三つめに、贈与税の非課税制度にも同様の改正があります。まず結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度(下記リンクも併せてご覧下さい。)についてですが、受贈者(子・孫等の直系卑属。以下贈与税の非課税制度において同じ。)の年齢要件が令和4年4月1日以後の贈与から結婚・子育て資金管理契約を締結した日において18歳以上(50歳未満)に引き下げられました。次に住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度についても、受贈者の年齢要件が令和4年4月1日以後の贈与から贈与を受けた年の1月1日現在で18歳以上に引き下げられました。これらも納税者にとって有利な改正と言えますね。
注意すべき点もこれまでと同様です。例えば1月1日現在で18歳または19歳である受贈者が3月31日に200万円、4月1日に300万円の住宅資金等の贈与を受けた場合は、4月1日の300万円は非課税制度の適用が可能ですが、3月31日の200万円は非課税制度の適用が受けられませんので、暦年課税で贈与税の申告をしなければなりません。該当する方は来年の贈与税申告の際には十分に注意してください。
令和3年度税制改正その2(教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の見直し)
成年年齢の引き下げに伴う相続・贈与税制の改正は以上になります(事業承継税制は長くなるため割愛させていただきました)。次回からは連載記事を予定していますので、当相続ブログをまたぜひご覧下さい。
それでは今回はこの辺で。
まだまだ新型コロナも予断を許しませんので、皆さんどうかくれぐれもご自愛ください。
【4/19追記】
上記の件につきましては国税庁からもリーフレットが公表され、表形式で見やすくなっていますので、下記のリンクも併せてご覧ください。
⺠法の改正(成年年齢引下げ)に伴う贈与税・相続税の改正のあらまし