ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

確定申告もいよいよ佳境に差し掛かってきました。今週も引き続き「空き家特例」について解説します。今回は譲渡に関する要件の続きです。「空き家特例」が適用可能な譲渡のパターンには次の3つがあります。

1.空き家を耐震リフォームし、その空き家を譲渡した場合
2.空き家を耐震リフォームし、その空き家と空き家の敷地等を譲渡した場合
3.空き家を取り壊して、その敷地等を譲渡した場合
※1と2については、その空き家が増改築等で既に現行の耐震基準を満たしている場合は、リフォームする必要はありません。

そして、空き家を譲渡するわけですから、相続してから譲渡(または取り壊し等)するまで空き家とその敷地等を事業の用・貸付けの用・居住の用に供してはいけません。これも十分注意すべき点になります。たとえ一時的な利用や無償での貸付けであっても、その時点で空き家ではなくなるので「空き家特例」の適用は受けられなくなってしまいます。また、3の場合は空き家取り壊し後の敷地等に建物や構築物があってもいけません。つまり、完全に更地にして、その後は譲渡するまで何も建てないということですね。

次に譲渡収入(未経過固定資産税等相当額等を含む。)が1億円以下であることも必要です。そしてこの1億円の判定は「空き家特例」の適用を受けた譲渡だけではなく、分割譲渡した場合に「空き家特例」の適用を受けなかった他の譲渡に係る売却代金も含めて判定します。また、共同相続人がいる場合はその相続人の譲渡等も含めて判定します。

この1億円要件の判定は実はこの「空き家特例」の中で最も難しい部分で、詳しく書くとブログ2~3回分くらいのボリュームがあります。他にも書くことが色々あって、確定申告期限(3月15日)までの限られた時間ではとても全ては書ききれません。総額1億円を超える豪邸に被相続人が独りで住んでいたというのはレアケースかとは思いますが、もし該当しそうな場合は取り急ぎ税理士や税務署にご相談ください。1億円要件についてはまた機会を改めて詳しく書きたいと思っています。

次に譲渡の相手方(買主)ですが、「特殊関係者」に譲渡した場合は「空き家特例」の適用を受けることができません。「特殊関係者」とは具体的には、相続人等(売主)の配偶者・直系血族(祖父母、父母、子、孫など)・生計同一親族・譲渡家屋での同居予定親族・内縁の妻(夫)やその連れ子等・いわゆる愛人やその連れ子等・同族会社などが該当します。したがって、別生計の兄弟(直系血族ではなく傍系血族)や配偶者の父母(姻族)に対する譲渡であれば適用可能になる余地があります。

最後に、相続財産を譲渡した場合は以前から取得費加算の特例制度(租税特別措置法第39条)がありますが、これとの適用関係についてご説明します。「取得費加算の特例」とは、譲渡所得の計算において相続税を納めた分だけ取得費に加算できるというもので、その分譲渡所得税が少なくなります。「空き家特例」との関係では原則としていずれかを選択適用ということになります。つまり基本的には両方を併用することはできませんので、計算してどちらか有利な方を選択します。

ただし、店舗併用住宅のように「空き家特例」と「取得費加算の特例」を併用できる場合もあります。例えば1階が被相続人がやっていたお店で2階に当該被相続人が住んでいた場合で、その被相続人が亡くなった後はお店をたたみ、その店舗併用住宅が空き家になったようなケースです。2階の住居部分は「空き家特例」を適用すると「取得費加算の特例」は使えませんが、1階の店舗部分には「取得費加算の特例」が使えます。この場合、敷地等については2階の住居部分の床面積と1階の店舗部分の床面積で按分します。

また、相続開始直前において敷地内に住居のほか車庫や物置などがある場合は、被相続人が住んでいた家屋のみが「空き家特例」の適用対象になりますので、車庫や物置等については「空き家特例」は使えませんが、「取得費加算の特例」が使えます。この場合、敷地等については住居の総床面積と住居以外の建物(車庫や物置等)の総床面積で按分します。

居住専用住宅の場合、通常は「空き家特例」の方が有利になるかと思いますが、平成26年12月31日以前の相続等では土地等については譲渡した土地等だけではなく、相続等で取得した全ての土地等について納めた相続税を取得費に加算できることになっていましたので、「取得費加算の特例」が有利になるケースもあり得ます。いずれにしても両方試算してみる必要があるでしょう。

なお、「空き家特例」については相続開始後3年経過日の年末までが適用期間であるのに対して、「取得費加算の特例」は相続税申告期限後3年間(相続開始日からだと原則として3年10か月間)が適用期間になります。微妙にズレていますので、ご注意ください。それでは長くなりましたので今日はここまでにいたします。次回は「空き家特例」の最終回です。「空き家特例」を受けるための手続きについて詳しく解説します。来週もぜひご覧ください。

それでは今週はこの辺で。
また来週お目にかかります。