ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。
税理士の臼井です。

先週初雪が降り、今週は積雪を伴う雪も降りましたね。岩見沢は40cmもの積雪を観測したとのことで、例年よりも寒いことを考えると今年は根雪になるのも早くなりそうです。北海道における新型コロナウイルス感染症の感染爆発も止まりません。11月5日に初めて100人を超えてから1週間連続で100人超えが続いており、11月9日には200人にも達しました。11月7日には警戒レベルもステージ3に上がり、再度厳戒態勢に入りました。皆さんも十分にご自愛ください。

それでは本題に入って参りましょう。今回からは令和2年度税制改正について連載を開始します。相続関連で重要なのは何といっても配偶者居住権(敷地利用権を含む。以下同じ。)です。配偶者居住権の設定時の相続税課税については以前当ブログで詳しく解説しました。また、配偶者居住権の消滅時に贈与税の課税が行われる場合があることも既に解説しました。詳しくは下記のリンクをご覧ください。

平成31年度【令和元年度】税制改正について(その13 民法(相続法)改正関連⑨(配偶者(長期)居住権パート2))

平成31年度【令和元年度】税制改正について(その14 民法(相続法)改正関連⑩(配偶者(長期)居住権パート3))

平成31年度【令和元年度】税制改正について(その15 民法(相続法)改正関連⑪(配偶者(長期)居住権パート4))

配偶者居住権の消滅時に贈与税の課税が行われるのは、被相続人(父)の配偶者(母)と居住建物を相続した相続人(子)との間で配偶者居住権を合意解除等し、当該相続人(子)が当該配偶者(母)に対してその対価を支払わなかった場合等です。具体的には母が老人ホーム等に入居することとなったため、配偶者居住権が設定されている居住建物に住まなくなる場合などが考えられます。十分にあり得る話ですね。この場合はまだ価値の残っている配偶者居住権が消滅し、子は居住建物の完全な所有権を取り戻すことができますから、その分利益を受けることとなり、子に贈与税が課税されるということになるわけです。

それでは子が母に消滅する配偶者居住権の対価を支払った場合の課税関係はどのようになるでしょうか。母の老人ホーム等の入居一時金等に充てるために、子が母に配偶者居住権の対価を支払うということも十分あり得る話です。令和元年度税制改正ではその点に関して明確ではなかったのですが、令和2年度税制改正で明らかになりました。結論から言うと、母は子に配偶者居住権を譲渡したこととなり、母に譲渡所得税(総合課税)が課税されることになります。

譲渡所得税には土地等や建物等を譲渡した場合の分離課税もありますが、配偶者居住権は借家権と同様、他の所得と合算される総合課税となりますので、注意してください。また、民法では配偶者居住権の譲渡は禁止されていますが、所得税法における譲渡は民法よりも範囲が広くなっており、配偶者居住権も譲渡所得の対象資産とされました。

また、土地等が収用等されその上に建っている居住建物が取壊等された場合にも配偶者居住権は消滅しますが、消滅した配偶者居住権に対しても補償金等が支払われることとなりましたので、この場合も母に譲渡所得税(総合課税)が課税されることになります(収用特例等も受けられます)。

このように配偶者居住権がその設定期間中に消滅することは十分にあり得ますので、相続時に配偶者居住権の設定を検討する際には、上記のような出口課税についても考慮しなければなりません。配偶者(母)が近い将来老人ホーム等に入居する可能性がある場合などは、贈与税や譲渡所得税の課税リスクがありますので、相続税の節税効果と併せた慎重な検討が必要です。

配偶者居住権の出口課税の概要については以上になります。具体的な課税関係については次回以降詳しく解説しますので、次回もぜひご覧ください。

それでは今回はこの辺で。
皆さんくれぐれもご自愛ください。